利用料金の高額化や受け入れ能力の不足などの課題が指摘されてきた東京の火葬場。都はこれまで主な責任は区市町村にあるとの姿勢を取り続けてきたが、小池百合子都知事は24日の都議会で、都としての取り組みを強化する方針を示した。約1400万人が暮らす東京で多死社会を迎える中、火葬場が抱える問題とあるべき姿を探った。（小林由比、奥野斐、神谷円香）

◆負荷が大きい業務「適性を見極めて」
　東京メトロ町屋駅（東京都荒川区）から徒歩約5分の住宅街。「東京博善」（港区）が経営する町屋斎場は、同社が創業した1921（大正10）年より前の明治時代からある火葬場だ。

　火葬炉は12基。同社の火葬炉は、棺おけを棒で支え全体に火を回して燃やすロストル式だ。台車に乗せる方式よりも短時間で火葬でき、冷却を含めて台車式の半分以下の約1時間で終わる。800～1000度で焼いて急冷するため、炉内の耐火れんがの消耗は激しいが、1炉で1日7回稼働できる高性能炉だ。

　火葬を終えて収骨する遺族らの元に戻す際、焼け残りなどがないようスタッフは炉の中を小窓からのぞき、長い棒でかきながら調整する。熱せられた空気の中、遺体に直接向き合う仕事は精神的な負荷も大きい。社員を配属させる際には、適性を慎重に見極めるという。火葬場での仕事を望む人は相対的に少なく、「人材確保は常に課題」と同社の野口龍馬社長は話す。

◆葬祭業界内で「利益重視で公益性に欠ける」と批判を受け
　人口が集中し、火葬場の新設が難しい東京23区。同社は寺院などの火葬場を買収し、火葬を担ってきた。2020年に広済堂ホールディングス（HD）の子会社となり、2021年には10年ぶりに火葬料を値上げ。2021年の改定では普通炉が1万6000円上がり7万5000円となり、その後も値上げが続いた。

　2022年にはHDの子会社が葬祭事業を始め、葬儀から火葬までを一貫して担えるように。葬祭業界などからは「利益重視で公益性に欠ける」などと批判を受けた。23区の区長でつくる特別区長会は昨年8月、火葬場以外の事業を手がけているため、火葬の値上げが適切かどうか判断できないとして、国に収支の透明性を示すよう義務付ける法整備を要望した。

◆区民葬儀廃止の理由は業界内で「不公平」があるから
　同社への批判が強まったきっかけの一つが、区民が割安となる「特別区区民葬儀」の取り扱いを来年3月末でやめる、と今年8月に発表したことだ。1948年ごろに低所得者も葬儀ができるよう始まった制度で、現在は各区が発行する券を使うと、普通炉の利用料が通常の9万円から5万9600円に割り引かれる。公費は入らず、火葬する会社の善意で支える制度のため、減額分は東京博善が負担してきた。

　区民葬儀は、全東京葬祭業協同組合連合会の加盟葬儀社だけしかできない。東京博善によると、同社の火葬場を使う葬儀社の75％は加盟条件から外れるなどの理由で非加盟で、同社は「非加盟社から『不公平だ』と言われる」と撤退の理由を説明する。区民葬儀をやめる代わりに、来年4月から火葬料を3000円引き下げ、生活保護受給者など向けの低額（3万9000円）料金は継続する。

◆「事業の永続性を保つため」利益は内部留保へ

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（出典 static.tokyo-np.co.jp）