(北村 淳:軍事社会学者)

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 マーク・エスパー米国防長官が9月16日に米ランド研究所(安全保障・軍事戦略を専門にするシンクタンク)で行った講演で、アメリカの同盟諸国・友好諸国に対して、それぞれの国防費を少なくともGDP比2%以上に引き上げ質・量ともに軍事力を強化してほしい旨を明言した。

 このエスパー長官による要求表明は、今後アメリカ軍が、極めて強力な敵となってしまった中国軍に対抗していくにあたり、とりわけ重点的に強化すべき3要素(海軍力の強化、同盟友好諸国との関係強化、ロジスティックス分野の強化)について再強調する講演においてなされたものである。

海上自衛隊の令和2年度インド太平洋方面派遣訓練における洋上補給訓練の様子(出所:海上自衛隊)

トランプ大統領が固執する「2%」

 これまでもトランプ大統領自身が、多くのNATO諸国(とりわけドイツ)の国防支出GDP比率はアメリカに比べて低すぎると苦情を繰り返してきた。その結果、NATOは、「国防支出をGDP比2%以上に引き上げること」ならびに「国防費のうち兵器装備費の占める割合を20%以上に引き上げること」の2項目を、すべての加盟国が達成すべき努力目標、すなわち基本的ガイドラインに設定した(世界各国の国防費GDP比率の平均値は2%強の状態が続いているため、トランプ政権は2%という数字を持ち出しているものと思われる)。

 トランプ大統領は「多くの同盟国がアメリカの国防支出に比べて“ただ乗り”状態にある」という不満を、しばしば口にしたりツイートしてきている。トランプ大統領の念頭にある不満の矛先の筆頭がGDP3位の日本と同4位のドイツにあることは明らかであり、それに引き続いて、NATOを構成する“裕福な”西ヨーロッパ諸国とカナダということになる。

 そして上記のようにトランプ政権はNATO諸国に対して一律「GDP比2%」を義務化するのに成功した。だが、日本に対してはこれまでのところ直接かつ公式には「GDP比2%」そして「兵器支出20%」を突きつけてはいない。

 ただし、NATO以外のアメリカの同盟国のなかで日本に続いてGDP順位の高い韓国(12位)、オーストラリア(14位)の国防支出GDP比はそれぞれ2.7%、1.9%となっている。そして、アメリカが重視している友好国であるインドGDPランク5位)の国防支出GDP比も2.4%である。

 ということは、今回のエスパー長官すなわちトランプ政権による「GDP比2%」のメッセージは、主として日本に向けられたものということができる。

超微増に過ぎない日本の国防費増額努力

 安倍政権下で日本の国防費は毎年増強されてきており、まもなく公表される防衛費概算要求はおよそ5兆4000億円と「過去最高額」になるようである(もっとも、これまでも実際には概算要求には金額が計上されない事項要求や補正予算による高額兵器の購入などがあり、2020年度の防衛費は実質的には5兆6000億円以上を達成している。よって2021年度の「過去最高額」という表現には疑問符が付されるべきである)。

 しかし、たとえ「過去最高」になると言われても、日本周辺の軍事情勢の緊迫化を考慮した国際軍事常識によれば、日本政府による過去数年間の国防費増額努力は「国防費カットよりはマシ」程度の超微増にすぎない(そのため米軍関係者などから、本コラム2020年2月20日新型肺炎、日本の杜撰な危機管理で日米同盟も大打撃」で紹介したように「同盟国として頼りにならない」という意見が寄せられているのである)。

日本自ら国防費を決定するのが本筋

 日本がトランプ政権の要求に従うならば、中国に次いでGDP3位である日本の国防費は、少なくとも11兆円が必要ということになる。

 とはいえ、日本の国防費を決定するのはもちろん日本自身(国民、国会、政府)であり、国防費は確固たる国防戦略(日本防衛の基本原則を簡明に示した戦略)を遂行するために必要な個別の軍事戦略や作戦概念を実施するための予算であることは言を待たない。適正なる国防戦略(上記の意味合いにおける)なしの国防予算は、国防当局各部局が手に入れたい兵器や装備の寄せ集め的な「お買い物リスト」に特徴付けられる「非戦略的予算」とならざるを得ない。

 したがって、トランプ政権が「日本もNATO諸国同様に国防費をGDP比率2%(現在はおよそ0.93%)まで引き上げ、国防支出に占める兵器装備費の比率を20%(現在はおよそ16%)まで引き上げろ」と日本政府に圧力をかけてきたとしても、唯々諾々と随う必要はない。日本自ら国防費を決定するのが本筋である。日本自身の国防戦略に基づいて算出された国防費が、たとえば「現状で十分」あるいは「必要額はGDP比1.5%」であった場合に、トランプを怒らせないために無理矢理2%に引き上げるポーズを示す必要はないのである。

(ただし日米間で「各同盟締結国は、国防費をGDP比2%以上に、兵器装備費を国防費の20%以上に維持しなければならない」といったガイドラインが日米安保条約に付随する形で取り決められた場合は、話は別である。)

日米同盟を尊重するならば海洋戦力の強化が必要

 しかしながら、日本政府国会が上記の意味合いにおける“適正な国防戦略”を策定するとしても、現状においては(日本がいわゆる“永世中立国”に変貌する決意でもしない限り)日米同盟を重視する、という姿勢を前提とせざるを得ない。とするならば、日本が独自の防衛態勢に加えて、アメリカ東アジア軍事戦略と歩調を合わせる態勢を固めるのはきわめて当然である。日本がアメリカの軍事力を必要とするときだけアメリカは日本の要望に応じ、たとえアメリカが日本の軍事力を必要としていても日本はアメリカの要望には応じない、というのでは、日米間に同盟関係が存在するとは言えない。

 冒頭に引用した講演でエスパー国防長官は、アメリカとその同盟友好諸国が中国との大国間対決に打ち勝つには、海軍力(より厳密に解釈すると「宇宙・サイバー戦力の支援を前提とした海洋戦力」)を飛躍的に発展させねばならない、ことをとりわけ強調した。

 しかしながらアメリカは莫大な予算をつぎ込んで海洋戦力の強化に取りかかってはいるものの、中国海洋戦力を封じ込めるだけの強力な戦力を手にするのは至難の業と考えざるを得ないという状況に直面している。

 それならば、日本としても独自に強力な海洋戦力(艦艇戦力、航空戦力、地上発射型接近阻止用長射程ミサイル戦力、サイバー戦力など)の構築を推し進め、アメリカ側諸国の海洋戦力と協力して強大な対中抑止戦力を生み出すことにより、中国共産党覇権主義的海洋拡張政策を諦めさせるという方針をとらざるを得ない。

 これは、日本が現在のような完全な島国であるという地勢的条件下にある限り、日本の国防戦略の鉄則である「敵侵攻戦力は一歩たりとも日本の海岸線を越えさせない」という原理に合致した国防戦力の構築といえよう。

 そして日本が、どのような具体的方策によって海洋戦力を強化するとしても、艦艇や航空機をはじめとする海洋戦力を構成する“道具”を取り揃え、要員を養成訓練し、メンテナンス態勢を整備するには莫大な予算が必要となる。具体的な算定をせずとも、「少なくとも防衛予算の微増程度では全く話にならない」ことは自明の理であると言わざるを得ない。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  「岸信夫防衛相」に中国が慌てふためく理由

(出典 news.nicovideo.jp)


中国海軍の大幅な増強により西太平洋における米海軍の絶対的優位が覆りつつあるのが現状であり、 日本がそれに対処するためには海自の大幅な増強が必要だが予算が確保できたとしても少子化により人員の確保が困難であり難しい状況である。


んじゃ手っ取り早くオハイオ級3隻、弾込みでレンタルで。ゆくゆくは自前で建造するとして。


上記の続き、我が国は防衛費をGDP比2%まで引上げ研究開発費を大幅に引き上げ、九州から東シナ海全域とその沿岸部を射程圏内に収める事の出来る極超音速地対艦誘導弾の開発、配備に重点を置くべきだろう。


永世中立国を日本の立ち位置でするのなら今の10倍でも足りないがな 同盟破棄された怒りのアメリカに最大の仮想敵国のシナに領土問題抱えてるロシアにおまけの朝鮮 アメリカと一緒に行く以外の選択肢はない


アメリカ様のご命令だ財務省は防衛省の要求額を丸呑みしなさい


かつて日本政府は米国に「シーレーンは(自力or共同)防衛する」と宣言したことがあったが、履行を迫ってきたらどうするつもりかな。


むしろ一気に4%~5%くらいにしてくれ。


最低でも3%だろ!


第二次大戦後アメリカが日本の手足を縛ったのに勝手なことを言うんだな。トランプはマッカーサーに文句言って来いよ。


むしろ今までが少な過ぎた。家の周りが泥棒強盗詐欺師だらけだと、自衛にもお金が掛かるのでしゃーなし。ついでに憲法改正もセットで進めて行きたい所


日本のマスゴミがネガキャンしてるのと、60年代安保を経験した左巻きの老害が多いせいでマトモな国防が阻害されている。ここに来てアメリカも日本に同盟の役割を強化させたい方向になってきてるので、主権国家としてちゃんと軍事的独立を確立させたいね。


必要なら2%と言わずに3か4%でもいいんだが。装備の調達や更新が遅々として進まないのも結局予算不足が原因だし。防御に徹するにしても、本来ならイージス艦やF35や10式戦車は(損失や故障等を考えたら)今の倍は要るだろうし。20式小銃への更新も素早くやって欲しい処。ただ今の予算では2%が限界かも知れない。社会保障費や地方交付金等がどうしても高いし


アメリカ様のお言葉だ!50%まで引き上げて、俺らの忠義を見せよう!増税もセットで行って、言われずともやる!という姿勢を見せるんだ!


どこかのK国は「どっちかについたら反対側から怒られる!責任とってくれんの!?」とか言ってますが、日本はそんな情けない事にならないよう願いたいものです。


むしろ上げるなら上げるで一気に上げて後に下げた方が良いのでは。そんな金何処にあるのかって話だけれどもね。 しかしアメリカ自身が日本があまり力を持ち過ぎないようにコントロールしてきたツケが回ってきてるんだから、そろそろその枷を外してくれよっていう。


まぁ実際に米国の対外戦略の見直しを迫るところまできていて慌てているのは確かでしょうけど米大統領選結果次第でしょうねd(・・現職が続投なら同盟強化で2%以上は確実、交代なら出方を見定めて予算編成となる。一方で韓国に対しては続投ならこのまま経済締付け継続弾除けにするし、交代なら防衛費増額の引き換えに韓国との断交を飲ませることもあり得る状況ですかね<(・・